PPI(プロトンポンプ阻害薬)の長期投与について

PPI(プロトンポンプ阻害薬)は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療、予防、逆流性食道炎の治療に使用される薬です。

商品名では、以下の4種類あります。

  • オメプラール
  • タケプロン
  • パリエット
  • ネキシウム

従来のPPIよりも強力に胃酸の分泌を抑制する、PCAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)と呼ばれる薬剤も2015年に発売されています。

商品名は以下です。

  • タケキャブ

PPIやPCABの安全性は比較的高いと考えられていますが、胃酸の分泌を強力に抑制することから、いろいろな副作用が心配されているのも事実です。

PCABに関しては、1年以上の長期投与の安全性についての報告はまだ少ないです。

PPIに関しては、長期投与に関連して発生する副作用についての報告がいくつかあります。

2019年に、1万7000人以上を対象に、PPI開始後3年間経過をみて副作用について調べた研究があります。

この研究において、統計学的な有意差をもってPPIの服用で生じた副作用は腸管感染症だけでした。

検討対象人数や経過観察期間について不十分だという意見もありますが、PPIの長期投与に関連する副作用発生の頻度は高いものではないと考えられます。

以下に、PPI長期投与に関連する副作用として、その可能性が懸念されているものを列挙します。

  • 腸管感染症
  • 胃のカルチノイド腫瘍
  • 胃ポリープ
  • 貧血
  • 肺炎
  • 骨粗鬆症、骨折
  • 胃癌
  • 大腸癌
  • 認知症
  • 腎機能障害
  • collagenous colitis

『胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021』においても、「必要に応じた最小限の用量で使用することを提案する」と記載されています。

PPIやPCABについては、治療上の有効性は確立されているため、長期投与を行う場合は、その必要性を十分に検討し、定期的な内視鏡検査を行うなど、経過をみていく必要があると考えます。

Author: ひろ消化器内科クリニック