ピロリ菌陽性の患者さんから、「自分の子供もピロリ菌がいないか調べてほしい」「ピロリ菌は何歳から検査したり治療した方が良いのか」というご質問を受けることがあります。
結論から申しますと、明確な方針は決まっていません。
日本では、「日本ヘリコバクター学会」と「日本小児栄養消化器肝臓学会」からそれぞれ提言が出ています。
「日本ヘリコバクター学会」では、「中学生以降に、自治体等でのスクリーニング検査・治療を考慮する」と明記されており、その理由として、「中学生以降で除菌治療を行うことで、家庭内感染を予防し、次世代への感染対策として非常に有効」だからとされています。
これに対して、「日本小児栄養消化器肝臓学会」では、「無症状の小児に対するピロリ菌の検査・治療は推奨しない」とされています。その理由として、「成人の胃癌予防戦略をそのまま小児に適応することを積極的に支持するエビデンスはない」と記されています。つまり「子供の頃にピロリ菌を除菌したほうが大人になってから除菌するよりも胃癌になりにくいという証拠がない」ことが理由です。
このように、正反対の見解ではありますが、個人的には、症状がなければ、大学生以降で良いのではないかと考えます。
除菌治療に保険適応があるのは高校生以上で、中学生以下の小児には基本的に保険適応はありません。
中学生、高校生、大学生、いつのタイミングで除菌するのが将来的な胃癌の発生を抑制できるかというデータはありませんので、一概には言えませんが、体格などを考慮し、除菌治療を安全に行えるのは大学生以降ではないかと考えます。
