先日、「軽症〜中等症の潰瘍性大腸炎治療〜5-ASA治療のポイントと次の一手〜」という演題の講演会を視聴しました。
日本において、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis;UC)の患者数は約22万人と推定されており、日常診療において珍しくない疾患となってきています。
近年、新たな生物学的製剤が登場していますが、患者さんの多くが軽症〜中等症であり、UCの基本治療薬は5-ASA製剤であることに変わりはありません。
特に我々のようなクリニックでは、5-ASA製剤を中心にいかに寛解状態を維持するかが大切だと考えます。
5-ASA製剤とは
5-ASA製剤は、5-アミノサリチル酸を有効成分とする薬で、大腸の炎症を抑えます。
炎症を起こしている粘膜に直接はりついて作用します。
そのため、経口剤(飲み薬)であっても、塗り薬のようなイメージで、患者さんにもそのように説明しています。
また、肌を保湿したり綺麗にしたりするのと同じように、薬をしっかり飲んで、腸を綺麗な状態に保ちましょうというお話もあり、大変参考になりました。
日本においてUCの方に使用できる5-ASA製剤は、サラゾスルファピリジン(サラゾピリン)、メサラジン(ペンタサ、アサコール、リアルダ)の4種類です。
サラゾピリンは、最も古くから用いられてきた薬剤で、薬剤が大腸に到達した後、5-ASAとスルファピリジンに分解され、主に5-ASAの成分が治療効果を発揮します。
ペンタサ、アサコール、リアルダは、大腸の炎症部位で5-ASA製剤が効果を発揮できるように、薬剤にコーティングを行っています。
それぞれ薬の飲み方や投与可能な量など違いはあり、患者さんごとに薬を使い分けます。
その他、5-ASA製剤には、局所製剤もあります。
具体的には、坐剤と注腸剤があります。
坐剤:ペンタサ坐剤、サラゾピリン坐剤
注腸剤:ペンタサ注腸
局所製剤は、炎症が直腸など肛門に近い側にある場合に使用することが多いですが、講演では炎症の範囲が広い場合でも症状を緩和させる意味合いでの使用も行っているとのお話がありました。
次の一手として
5-ASA製剤のみで寛解導入できない場合や寛解維持できず再燃してしまう場合に、次の一手として、局所ステロイド作用が期待される経口ステロイド剤コレチメント錠(ブテソニド腸溶性徐放錠)が新たに選択肢として加わりました。
つまり、治療効果を発揮してほしい大腸に薬剤が送達されるように設計されており、大腸で持続的に放出されるように作られています。
そのため、全身への副作用が少ないというメリットがあります。
米国消化器病学会のガイドラインには、その位置付けが記載されています。
・適量の5-ASA製剤が効かない、または5-ASA不耐症の軽症の活動期で左側大腸炎型の寛解導入療法
・5-ASA経口剤が効かない軽症〜中等症の活動期の寛解導入療法
・中等症の活動期の寛解導入療法
上記の場合には、コレチメントの投与が推奨されるとの記載があります。
また、講演の中で、今のところ実際の臨床の場でどのような患者さんに効いているかという具体的なお話もあり、今後の診療を行う上で非常に参考になりました。