「便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症」が、2023年7月13日に刊行されました。
便秘の定義
便秘は、「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義されます。
慢性便秘症は、「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、身体にも様々な支障をきたしうる病態」と定義されます。
「慢性」が示す期間については、「慢性便秘症診療ガイドライン2017」にて定義される「6ヵ月以上前から各症状が発症し、最近3ヵ月間はその症状が持続している」に準拠しますが、日常診療においては慢性を具体的な期間で区切らず、診療する医師の判断に委ねるとされています。
慢性便秘症の分類
症状の観点から、便が出ない「排便回数減少型」と便が出せない「排便困難型」に分類されます。また、この2つの病型は合併することもあります。
慢性便秘症の発症リスク
①性別:女性に多く、女性/男性比は2.22との報告があるります。
②身体活動性の低下:エビデンスは限られていますが、身体活動性が低いほど発症リスクは有意に高くなります。
③腹部手術歴:特に大腸・肛門手術や婦人科手術などは発症リスクを高くすることがわかっています。
④特定の基礎疾患:精神疾患や神経疾患など
⑤加齢
⑥薬剤:抗コリン薬、三環系抗うつ薬、抗精神病薬など
慢性便秘症と長期予後の関連
慢性便秘症は、心血管疾患の発症・死亡リスクの上昇、パーキンソン病や腎疾患の発症リスクの上昇に関与するため、長期予後に影響を与える可能性があります。
しかし、大腸癌の発生への関与は不明です。
慢性便秘症における警告症状・徴候
- 排便習慣の急激な変化
- 血便
- 6ヵ月以内の予期せぬ3kg以上の体重減少
- 発熱
- 関節痛
- 異常な身体所見(腹部腫瘤の触知、腹部の波動、直腸指診による腫瘤の触知、血液の付着など)
慢性便秘症における危険因子
- 50歳以上での発症
- 大腸器質的疾患の既往歴または家族歴
「警告症状・徴候」、「危険因子」、また「通常の臨床検査での異常所見」のうち、いずれかひとつでもあれば、大腸内視鏡検査を行う必要があるとされています。