胃酸が食道に逆流することで胸やけや呑酸などの症状をきたす病気を「胃食道逆流症(Gsatro-Esophageal Reflux Disease:GERD)」と呼びます。
GERDは以下の2つのタイプに分類されます。
①逆流性食道炎:内視鏡で食道粘膜に炎症がある
②非びらん性GERD(non-erosive reflux disease:NERD):内視鏡で食道粘膜に炎症がない
日本では、非びらん性GERD(NERD)がGERDの約2/3を占めています。
つまり、胸やけや呑酸などの症状があるにもかかわらず、胃カメラをすると食道粘膜は問題ないと言われる方が多くいらっしゃるということです。
非びらん性胃食道逆流症(NERD)
前述したように、胸やけや呑酸などの症状があるにもかかわらず、胃カメラで食道粘膜に炎症を認めない病気のことを言います。
特徴としては、GERDに比べて
①若年の女性に多い
②食道裂孔ヘルニア(食道と胃のつなぎ目のゆるみ)の合併が少ない
③BMI(Body Mass Index)が低い
④プロトンポンプ阻害薬(PPI)の奏効率が低い
などが報告されています。
NERDの分類
NERDは以下の3タイプに分類されます。
①異常な食道内の酸暴露を有するtrue NERD
②異常な酸暴露は認めないが、食道の感受性が亢進し、少量の酸逆流や酸以外の液体の逆流によって症状を有する逆流過敏性食道
③逆流とは無関係に症状が出現する機能性胸やけ
①に対しては酸抑制が有効ですが、②に対しての酸抑制の効果は一部であり、③に関しては酸抑制薬の効果はさらに少ないと言われています。
NERDの原因
①胃酸の逆流が関与しない食道の運動機能異常
②胃酸の逆流に対する食道の知覚過敏
③唾液分泌の低下
NERDの治療
NERDに対しても、逆流性食道炎の治療と同じようにPPIなどの酸分泌抑制薬を使用しますが、先に述べたように逆流過敏性食道や機能性胸やけには効果がないことも多いです。
PPIを2~4週間服薬し、症状の改善があればそのまま継続あるいは一時休薬を検討します。
PPIにより満足する症状の改善がなければ、消化管運動機能改善薬や漢方薬等を使用します。
そのほか、アルギン酸塩(アルロイドG)を食前投与することも多いです。
治療に難渋する場合や治療抵抗性のNERDの場合には、酸逆流の関与しない病態(好酸球性食道炎など)を考える必要があります。
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