下痢や便秘、腹痛といったお腹の不調を訴え来院される方は多くいらっしゃいます。
症状が一過性のものはウイルスや細菌による感染性腸炎の場合も多いですが、お腹の不調が長引いている場合には、過敏性腸症候群(IBS)、あるいは炎症性腸疾患(IBD)の可能性があります。
①過敏性腸症候群(IBS)
下痢や便秘といった便通の異常、腹痛などの症状を繰り返す病気です。
炎症性腸疾患(IBD)と症状は似ていますが、大腸内視鏡検査をすると腸の中はきれいで、炎症や腫瘍などを認めないことが特徴です。
主にストレスや自律神経の乱れなどが原因で症状が出たり、悪化したりします。
②炎症性腸疾患(IBD)
腸に炎症を起こす病気で、まだ原因は分かっていません。一般的に潰瘍性大腸炎とクローン病の2つを指します。
腸に炎症を起こすことで腹痛や下痢、血便といった症状をきたしますので、過敏性腸症候群(IBS)と違い、大腸内視鏡検査をすると腸の中に炎症を認めます。
これら2つの疾患を鑑別する検査として、「便中カルプロテクチン検査」があります。
カルプロテクチンは、白血球の一つである好中球に多く含まれるタンパク質です。
腸に炎症が起きると、そこに好中球が集まるため、便に含まれるカルプロテクチンの量を測定することで、腸に炎症をきたしているかどうかを調べることができます。
過敏性腸症候群(IBS)と炎症性腸疾患(IBD)の鑑別における便中カルプロテクチンの有効性について以下のように記載されています。
「カルプロテクチンは複数の文献で有効性が示されており、IBDと IBSの鑑別において、有効性が示され、大腸内視鏡検査をすべき患者の選択にも有用と考えられている」
また、血清CRPや赤沈といった血液検査でわかる炎症マーカーよりも感度、特異度が高いと記載されています。
大腸内視鏡検査は事前の準備も大変ですし、検査を受けるにも抵抗がある方も多くいらっしゃると思います。
便中カルプロテクチンは、便検査なので身体への負担がなく、簡便に、腸の炎症状態を把握することができる検査です。
慢性的な腸の炎症が疑われる患者さんに対して、補助的に行う検査としては、非常に有効であると考えます。
当院でも検査を行うことができます。便を提出して頂いた後、約1週間で結果が出ます。それをふまえて、大腸内視鏡検査を行うか検討するのも一つの手であると考えます。
慢性的な便通の異常等、気になる症状のある方は、お近くの消化器内科でご相談ください。